竹内 洋行
Hiroyuki Takeuchi
クラシックカクテルが時代を超えて魅了され続けるのは、そこに味わいだけではなく、 バーテンダーの人物像が映るからだと思います。クラシックカクテルのレシピはシンプル であり、材料も比較的入手しやすい反面、使用する材料の選択により無数の味わいが生まれ、出来上がるカクテルはどれもが正解になります。我々バーテンダーはその複数できる 味わいのなかで、自身が正解と考える味わいがどれかを求め、その正解に如何に近づける かを日々試行錯誤し完成させていくからこそ、そのクラシックカクテルにはバーテンダー の想いがつのり、作り手であるバーテンダーの生き方を示す一杯になるのではと思います。 ホワイトレディは、ベースがジンからブランデーに変わればサイドカーになるように、 ベースによって様々な姿に変わるカクテルの一つであり、それぞれのベースのスピリッツ のおいしさの違いを、飲み手に伝えやすいカクテルだと思います。そしてシェークで作り あげるカクテルです。 私はホワイトレディにはジンが持つジュニパーベリーの清涼感がしっかりと生き、ホワ イトレディという名前から連想する綺麗ですきっりとした味わいを求めたいと思います。 そしてシェークすることにより、ジンが持つアルコールの角を削るのではなく、他の材料 と気泡でカクテル全体を包むことにより、丸みを帯びた口当たりの良い味わいを目指した いと思います。 今回、テーマの「シッピスミスV.J.O.P」は私が求めるホワイトレディを表現してくれる 材料だと思います。レモンのような柑橘との相性はもちろんであり、他のジンよりもしっ かりとしたジュニパーベリー感と強いアルコール感はオイリーさを伴い、しっかりとシェ ークをしてもジンらしさを失わずに丸み帯びた清涼感のあるカクテルへと近付けてくれま す。しっかりとした強めのカクテルなのに、なぜか滑らかで飲みやすい、気づいたらいつ のまにか飲み干してしまっているような「ホワイトレディ」をどうぞお楽しみ下さい。 材料を入れてシェークをすれば完成する「ホワイトレディ」ですが、シンプルな中に非 常に多くのことを考えさせられます。私などはこれからもまだまだ考え、磨いていかなけ ればいけないカクテルだからこそ、今回のクラシックカクテルに選ばさせて頂きました。