辻 英和
Hidekazu Tsuji
バーで飲めるショートカクテルの代表とも言えるギムレット。 味も見た目の印象もとても洗練されたカクテルであり、私自身大好きなカクテルなのですが、果たして人口の何%の人がこれを美味しく感じるのか、これを如何に多くの方々に楽しんでいただくか、それをよく考えます。 日本においてギムレットと言うと「度数が強い」、「キリッとした」イメージがあります。 とても人気のカクテルですが、カクテルに慣れた人やバーラバー以外の方々にはどうも酒精が強すぎる気がします。 アルコールデビューしたばかりの学生さんやビールや缶チューハイに慣れた方でも飲めるショートカクテルを作りたいという想いは以前からありました。 ロングカクテルに逃げることは簡単ですが、ショートカクテルの魅力も全員に伝えることができるのなら、バーテンダーとしては選択肢がかなり広がります。 文献上最古のギムレットとして「ジレット・カクテル」というフレッシュライムを使ったステアのカクテルがあります。 氷を詰めたミキシンググラスにオールドトムジンとライムジュース、砂糖を入れステアします。 当時はキンキンに冷えた氷ではなかったでしょうし、何よりステアなので加水も多く度数が低いはずです。 そして甘めなので誰でも飲めるテイストに仕上がります。 当時のライムの質は分かりませんが、本来のレシピで作るとジンとライムが半々と酸味が非常に強くなるので、その辺のバランスも考慮しながら、より飲みやすくなるように作りました。 まずはミキシンググラスに氷をパンパンに詰め、水を入れます。70回ほどよくステアし、ミキシンググラスを冷やしながら氷の温度を下げた後水を切ります。 次に常温のシップスミスV.J.O.P、フレッシュライムジュース、シンプルシロップを加え120回ほどロングステアします。 3つの材料と溶けた氷の4つが材料になり1つのカクテルになります。 ゆっくり丁寧にステアするので、シップスミスが持つ複雑かつ爽やかな香りも非常に立ってきます。 以前からバーの現場で、ショートカクテルを飲んだことのないお客様にこちらを提供していましたが、誰一人からも「強い」という感想を頂くことはありませんでした。 これからも、バーラバーだけでなく、より多くの方が楽しめるこのようなショートカクテルを考案し、カクテルの裾野を広げていきたいです。