DISCOVER THE CLASSIC #2 – 新井加菜とホワイトレディ
輝かしい実績を誇る女性バーテンダーは、同じく女性を意味するホワイトレディとどのように向き合ってきたのでしょうか?
1920年頃、ヨーロッパのバーで誕生して以降、多くのカクテルラバー達を惹きつけてきたホワイトレディ。淡く美しい純白の色合いや、爽やかな口当たりと飲みごたえのある味わいから長い間愛されてきたジンのクラシックカクテルです。
そんなホワイトレディについて、世界的なカクテルコンペティションで日本一に輝いた経歴を持つ、BAR AVANTI(東京・銀座)の新井加菜さんに渾身の1杯をお作りいただき、それをもとにホワイトレディを軸とした自身のエピソードについて語っていただきました。
– Recipe –
①SIPSMITH ロンドンドライジン 40ml
②コアントロー 20ml
③フレッシュレモンジュース 15ml
④グレープフルーツスライス 1/2カットシェイカーに全ての材料を入れ、氷でグレープフルーツのフレーバーを抽出するべく叩くようにシェイクし、ダブルストレインで漉す。
新井さんがお作りになられたのは、ずばりどのようなホワイトレディですか?
SIPSMITHのロゴの白鳥を彷彿させるような「エレガントで爽やかなホワイトレディ」がテーマです。
SIPSMITHのエレガントさを活かすべく、甘酸味のバランスを取りながら、グレープフルーツの苦味を加えることで奥行きを持たせ、立体的な味わいへと仕上げています。
他の柑橘も試した上で、気品を感じさせる風味を持つグレープフルーツが、私が望んでいたエレガントなホワイトレディにはぴったりでした。
材料の3/4はお酒なのですが、その強さが前面に出ないように意識しながら、甘すぎず酸っぱすぎず、グレープフルーツの苦味を効かせることでエレガントで爽やかなカクテルにまとめ上げています。
SIPSMITHはどのように活かされているのでしょうか?
数あるジンの中でも、SIPSMITHはエレガントさが印象的です。ボトルの見た目ももちろんなのですが、味わってみると白い花のようなエレガントさと、レモンやオレンジの柑橘の爽やかさが感じられます。この部分をしっかり活かすことを念頭にレシピを調整しました。
一般的なホワイトレディのレシピに比べ、ジンが40mlと少し多めなのですが、多めの甘酸味に対して色々試した結果40mlがベストでした。
何かのフレーバーが突出する事もなく、それにSIPSMITHの伝統を重んじる姿勢は今回のようなクラシックカクテルと重なる部分があり、ピッタリでした。
新井さんにとってホワイトレディとはどんなカクテルですか?
ホワイトレディは自分にとって少し苦い思い出のあるカクテルなんです。
というのも飲食店で働き始めたばかりの20歳の時、カクテルブックを見てそのネーミングに惹かれ、作って飲んでみたのですが…強くて飲みきれなかったんです。今振り返ると、度数が高いお酒がしっかり入っているから強いのは当たり前なんですけどね。
その経験からしばらく苦手意識がありまして…赤坂、銀座とバーテンダーとしてキャリアを積んでいく中で、マティーニやギムレットほど触れる機会が多くはなく、もちろんそれでもたくさん練習はしましたが、自分が最初に飲んだ時のイメージを払拭するには至らなかったんです。
それが今回、「DISCOVER THE CLASSIC」の企画を通して、改めてホワイトレディと向き合ってみたところ、今までで一番納得がいく、自分が好きだと思える一杯が完成したんですよ。
自分の苦い思い出があるから、初めて飲む方にも美味しいと思っていただきたいですし、また飲みたいとも思っていただきたい…そう考えながらネーミングと味わいが重なるような仕上がりを目指したところ、まさにエレガントで爽やかなホワイトレディが完成したんです。
ホワイトレディの思い出や印象的なエピソードを教えてください
正に今回の「DISCOVER THE CLASSIC」の企画です。
コロナ禍で時間がたくさん出来たことはある意味ではラッキーでした。SIPSMITHの特性を捉え直して、それを生かすためのレシピを再構築する時間を十分に取れましたし。
過去に業界の先輩方からいただいたアドバイスも参考にしながら、お店の先輩と一緒に試行錯誤を続けていたらベストなホワイトレディに行き着いたんです。その時間はとても楽しかったですし、長年抱き続けてきた苦手意識を払拭できたのですから、良い思い出となるでしょうね。
もしも新井さんがホワイトレディの考案者だったらどのようなカクテル名にしていましたか?
ホワイトレディ以外に思いつきませんし、これ以上のネーミングはないと思っています。
というのも、飲んでみたいと惹きつけるネーミングだし、すごくシンプルで絶対に忘れないだろうネーミングですよね。これだけ長い間世界中で愛されている理由の一つにネーミングも挙げられると思うんです。考えた方は本当にすごいなと思います。
最後に、バーテンダーとして今後どのようなカクテルを作っていきたいですか?
飲んだ方が何かを考えるきっかけとなり、それがその先々につながり、ストーリーとして巡っていくようなカクテルを作っていきたいです。
2018年に出場したバーテンダーコンペティション「ワールドクラス」の世界大会で、「自分のカクテルによって周りの人にどれだけポジティブな影響を与えられるか」という内容のお題がありまして…その当時は自分が作ったカクテルが美味しければ良いと思っていたこともあり、うまく表現できなかったんです。
そのモヤモヤが残っていたのですが、何ができるんだろうかと自問し続けた結果、ようやくそれを実際のアクションに移せる気がしてきました。例えば私は今、環境問題やサスティナビリティ、健康的な生活などに興味があります。そうした自分が興味があることをカクテルを通じてお伝えし、飲んだ方が何かを考えるきっかけとなるような、そういったカクテルを作りたいと思っています。
【BAR AVANTI】
住所:東京都中央区銀座8丁目5-13 マキシドビル4F (地図をみる)
営業:16:00〜0:00 日祝定休 ※時短要請中は営業時間に変更あり
電話:03-3571-7885
SNS:[Facebook]
写真・文:小針真悟